心の風邪、という言葉

「うつは心の風邪」という言葉があります。
この言葉を聞くと、どういったイメージを思い浮かべるでしょうか?

「うつ病は誰でもかかる病気」というのがまず思いつくかと思います。続いて、「うつ病は風邪のようにすぐに治る」とか「少し休めば治ってしまう」とか思い浮かべると思います。

私が心の病を発症した当時、病院では「抑うつ」として診断されました。
気分が沈み切っていて、何もやる気が出ず、その気分に引っ張られるように身体もだるかったので、こういった診断になったのだと思います。





病院に行く前、心のバランスが崩れた時から学校を休んでいたわけですが、病院に行ってからもさらに休み続けました。心の病にかかったときは休息は大事なことです。

でも、当時の私はそんなことは知りませんでした。
たしかに、休むこと以外できることがありません。しかし、休み続ければ休み続けるほど、学校の勉強についていけなくなると思っていましたので、心がどんどん焦っていきました。しかし、焦っても焦っても、何もできないのです。
そんな心境でしたので、家の中で叫んだり暴れたり、極端に沈んで寝込んだりを繰り返していました。

そういった状況で、家族から言われ続けていた言葉があります。
それが「うつ病は心の風邪だからすぐ治るよ」という言葉でした。

言われると、その場では「ああそうなのか、ならもう少し休んで治療しよう」と思うのですが、時間が経てば経つほど、今度は「時間が経っても治らない。このうつ(風邪)は重病なんじゃないか?」「本当に治るのか、一生治らずこのままなんじゃないか?」「治るはずの病気なのに自分で治せないなんて、
自分はなんてダメなんだ」などと思うようになっていました。

「うつは心の風邪」という言葉のおかげで、うつ病は誰でもかかる病気だということが理解され、気軽に病院に行けるようになったことはとてもいいことなのだと思います。

反面、私のように実際にうつ病になった人間にとって、これほど辛い言葉はありませんでした。
簡単に治るはずの「風邪」が全然治らないんですもの!
当時、ますますますます焦った覚えがあります。

そういった私の経験上、「うつは心の風邪」という言葉を実際にうつや神経症などの診断を受けた人にはあまり言わないでほしいです。
相手の気を楽にするつもりで放った言葉が、私に対してのようにマイナスの影響を多大に与えることもあります。

うつ病の治療のゴールは、「治癒」ではなく「寛解(かんかい)」なのだそうです。
「寛解」とは「病気の勢いが衰えて症状が出ていない状態を示す言葉」なのだそうです。
風邪のように完治するわけではありません。その点について、誤解のないように病気と付き合わねばなりません。

▼参考サイト
『ダイヤモンド・オンライン』
「ウツ」を“心の風邪”と喩えることの落とし穴http://diamond.jp/articles/-/3420